コラム
Column

歯周病とは?治療すると糖尿病の血糖値が改善するって本当?

歯ぐきの病気である「歯周病」と、血糖値が高くなる「糖尿病」は、一見まったく関連のない病気のように思えます。
しかし近年、この二つが互いに影響し合う関係にあることが明らかになっています。
 
では、「歯周病を治療すると糖尿病の血糖値が改善する」という話は本当なのでしょうか。
結論からお伝えすると、歯周病治療は血糖コントロールの改善につながる可能性があると考えられています。
ただし、糖尿病そのものが治るという意味ではありません。
糖尿病治療と歯周病治療の双方を継続することが大切です。
 
そこで今回は、その理由と研究結果をわかりやすく説明します。
 

参照:東京医科歯科大学|2型糖尿病への集約的治療による歯周病の改善 >

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~「糖尿病」 >

 
 
院長

近藤 院長

経歴
平成29年:近藤歯科開院
大阪歯科大学卒業後、13年間の研鑚を経てこの度、谷町九丁目の地に開院

医院名:近藤歯科
所在地:〒543-0072
大阪府大阪市天王寺区生玉前町5-30

 
 

歯周病と糖尿病は「双方向に影響し合う」関係

歯周病と糖尿病は、それぞれ患者数の多い疾患です。
そして現在では、この二つは「双方向に影響し合う」関係にあると考えられています。

・糖尿病があると歯周病が悪化しやすい
・歯周病の炎症が強いと血糖コントロールが乱れやすい

このような相互作用が指摘されています。
 

なぜ炎症が血糖に影響するのか

歯周病は、歯と歯の境目にある溝「歯周ポケット」内で細菌感染が続く慢性炎症です。炎症が続くと、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが血液中に放出されます。
これらの物質は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の働きを妨げる作用があるのです。インスリンが効きにくい状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。
インスリン抵抗性が高まると、血液中の糖が細胞に取り込まれにくくなり、血糖値が下がりにくくなります。
そのため、歯周病による慢性炎症が血糖コントロールに影響する可能性が考えられています。
 
歯周病が糖尿病の合併症の一つとして位置づけられているのは、このような背景によるものです。

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム~口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連 >

 

歯周病治療でHbA1cはどのくらい変わるのか

では実際に、歯周病治療を行うと血糖値はどの程度変化するのでしょうか。
 
歯周治療によるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の改善度は平均0.4%程度とされています。
これは、研究によっては糖尿病治療のお薬1剤分に匹敵するという見解をもつ人もいます。
 
ただし、これは「平均的な傾向」であり、すべての人に同じ効果が現れるわけではありません。
また、糖尿病の基本治療に代わるものではありません。
重要なのは、歯周病の炎症を抑えることが血糖コントロールのサポートとなる可能性がある、という点です。
 
また、体格指数(BMI:体重[kg]÷身長[m]2)が25kg/m2前後のややぽっちゃりタイプの糖尿病の方が歯周病の影響をうけやすいとされており、体格指数(BMI)が30kg/m²を大きく超える高度肥満の方では、脂肪組織そのものが炎症性物質を多く産生するため、歯周病の影響が目立ちにくい可能性も指摘されています。
 
つまり、背景因子によって効果の現れ方が異なることも理解しておく必要があります。
 
 

糖尿病治療を強化すると歯ぐきも改善する?

一方で、糖尿病治療を強化すると歯周病が改善する可能性も報告されています。
 
東京医科歯科大学などの共同研究では、血糖管理が困難な2型糖尿病患者に対して集中的な糖尿病治療を行ったところ、HbA1cが9.6%から、6ヶ月後には7.4%まで改善しました。
同時に、

・歯周ポケットの平均深さの減少
・4mm以上のポケットの割合の低下
・歯ぐきからの出血率の低下
・炎症面積(PISA)の減少

といった歯周組織の改善が確認されました。
 
この研究では、喫煙やBMI、歯磨きの状態などの影響を統計的に補正した上で解析しており、血糖コントロールの改善と歯周炎の改善が有意に相関していました。

参照:東京医科歯科大学|2型糖尿病への集約的治療による歯周病の改善 >

 
つまり、「歯周病が血糖に影響する」だけでなく、「血糖コントロールが歯ぐきの炎症に影響する」可能性も示されているのです。
 

歯周病とはどのような病気か

ここであらためて、歯周病の基本を整理しておきましょう。
 
歯周病は、歯垢(プラーク)に含まれる細菌によって歯ぐきに炎症が起こり、やがて歯を支える骨が失われていく進行性の疾患です。
単なる歯ぐきの腫れではなく、歯の土台が破壊されていく慢性炎症性疾患といえます。
 
初期には歯ぐきの腫れや出血がみられますが、痛みがほとんどないため自覚しにくいのが特徴です。
炎症が続くと歯周ポケットが深くなり、細菌がさらに増殖しやすい環境になります。
その結果、歯槽骨が吸収され、歯が動揺し、最終的には抜歯にいたることもあります。
 
2024(令和6)年の歯科疾患実態調査では、4mm以上の歯周ポケットを有する人は55歳以上の各年代で50%を超えています。
また15~24歳でも24.7%が該当しており、若年層にも広がりがみられます。

参照:厚生労働省|令和6年「歯科疾患実態調査結果の概要」p23 >

 
歯周病は決して一部の人の病気ではなく、非常に身近な慢性疾患です。そして、その慢性的な炎症が全身へ影響を及ぼす可能性が指摘されています。
 

糖尿病とはどのような病気か

糖尿病は、血液中のブドウ糖が慢性的に高い状態が続く全身疾患です。
2024(令和6)年の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる人は約1100万人、予備群を含めると約1800万人と推計されています。

参照:厚生労働省|令和6年「国民健康・栄養調査結果の概要」p13 >

 
多くは2型糖尿病で、生活習慣や体質が重なり、インスリンの分泌不足やインスリン抵抗性によって発症します。
 
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映する指標とされており、HbA1c6.5%以上で糖尿病が強く疑われるのです。
HbA1cが高い状態が続くと、網膜症、腎症、神経障害といった合併症のリスクが高まります。

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム「糖尿病」 >

 
高血糖状態では免疫機能が低下し、炎症が治まりにくくなります。そのため、歯周組織の炎症も悪化しやすくなるのです。
 
 

噛むことが糖尿病によい影響をもたらす?

近年、「口から食べること」そのものが血糖コントロールに関係していることがわかってきました。
以前は、血糖値が上がると膵臓がそれを感知してインスリンを分泌すると考えられていました。
 
しかし現在では、食べ物を口から摂り、小腸で吸収されるときに、腸から「インスリンの分泌を後押しするホルモン」が分泌されることが明らかになっています。
このホルモンはGIPやGLP-1と呼ばれ、食後のインスリン分泌を促進します。
 
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞へ取り込ませる働きを持つホルモンです。
そのため、インスリンが適切に分泌されることで、食後に上昇した血糖値が緩やかに調整されます。
 
このように、「口から食べる」という過程は、インスリン分泌を通じて血糖コントロールの仕組みに関与していると考えられています。
しっかり噛んで食べることは、身体が本来持っている血糖コントロールを支える一要素といえるでしょう。
 
 

誤解してはいけないポイント

ここで重要なのは、「歯周病治療だけで糖尿病が治るわけではない」という点です。
 
歯周病の治療をすると、HbA1cが平均0.4%改善するという数値は、あくまで歯周治療が血糖コントロールに影響する可能性を示すものです。
糖尿病の基本治療である食事療法・運動療法・薬物療法に代わるものではありません。
同様に、血糖値が改善しても、歯周病の原因である細菌(歯垢や歯石)を除去しなければ炎症は再発します。
重要なのは、どちらか一方ではなく、歯周病と糖尿病の両方を管理することです。
 
 

歯周病と糖尿病を同時に管理するという考え方

歯周病と糖尿病は、それぞれ別の病気でありながら、炎症を通して影響し合う可能性があることがわかってきました。
歯周病の治療によってHbA1cが平均0.4%程度改善するという報告もあり、糖尿病管理の一環として歯周病を治療することが大切だと考えられています。
 
もちろん、歯周病治療だけで糖尿病が治るわけではありません。
糖尿病には内科での治療があり、歯周病には歯科での基本治療があります。
しかし、両方を同時に整えていくことで、身体全体に及ぶ炎症の影響を減らす可能性があります。
 
歯ぐきの出血や腫れが気になる方、糖尿病と診断されている方は、歯科でお口の状態を確認してみませんか。
気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


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